福島県立視覚支援学校 地域支援センター 目の相談室 のびのび だより R6.2月発行    寒い日が続いていますが、子どもたちの元気な声が校内を暖かくしてくれています。皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか。今年度も「地域支援センター 目の相談室 のびのび」では、県内各地でさまざまな教育相談を実施してきました。今回は、本校地域支援センターが実施している視覚障がい教育についての理解・啓発活動と来校相談支援の中から、出前授業とのびのび保護者勉強会について紹介します。  1 出前授業  本校地域支援センターでは、県内の小中学校等に対して、「視覚障がいの理解」を目的に、出前授業を行っています。今年度は小学校7校、中学校1校で授業を実施しました。以下に、主な内容を紹介します。 ※※小学校の教室で話をされている、水本先生の写真。 (1)点字体験  点字器で五十音や自分の名前の点字を打つ活動、点字の歴史や点字教科書の紹介などを行っています。小4の教科書に浮き出た点字が掲載されているものがあり、また点字が付記された家電製品や商品も増えていることから、子どもたちもより点字を身近に感じてくれているようです。授業後自分で点字器を購入し、葉書を送ってくれた子どももおり、その意識の高さに驚かされました。 ※※点字器で点字を打っている、男子のイラスト。 (2)弱視体験  シミュレーションレンズを付けた状態で、普段使用している教科書を読んだり、文字を書いたりすることを通して、白内障や視野狭窄等の弱視の見え方の体験を行います。線の太さを変えることで見やすさが変わること、目が見えにくいからといってやみくもに文字を大きくすれば良い訳ではないこと等、子どもたちが自ら気づき、考えられるような言葉かけをするようにしています。 (3)手引歩行体験  二人ずつペアとなり、他方がアイマスク、他方が手引きをし、慣れている校舎内を歩きます。合わせて白杖を持ったり、点字ブロックの上を歩く体験もします。特に手引きをする際の相手への言葉かけや歩く速度を意識させ、「アイマスクをして怖かった」ではなく、人を思いやることの大切さに気付けるようにしています。 ※※手引歩行している、成人男性のイラスト。 (4)視覚障がい者の生活に関する講話  全盲の日常生活について、歩行、買い物、仕事、ICT機器の活用等について失敗談なども交えながら具体的に説明します。合わせて、児童生徒からの質問にも答えています。「どうやって食事をするのか」、「お風呂は一人で入れるのか」、「お金の区別はどうするのか」等の質問は定番です。「視覚障がい者は人の助けがないと何もできない」という子どもたちのイメージを変えるべく、また、明るく楽しく、皆さんと同じように毎日を楽しんで生活していることを伝えるように心がけています。 (5)まとめ  授業の最後には、「障がいの在る無しに関わらず、自分の周りに困っている人がいたら、勇気を出して声をかけてみて。まずは自分の周りのクラスの人から始めてみてほしい。それが広がって行けば、皆もっと助け合うことができ、良い社会になって行くのではないか・・・」と伝えています。 最近、社会の「障がい」の捉え方がかなり変化してきていると感じています。頻繁に耳にするダイバーシティー(多様性)は、「特定の人々を性別や人種などの生まれ持った属性でくくり、それを保護することではなく、一人ひとりが持っている違いを認め、尊重しようということ」という意味です。子どもたちには、出前授業での視覚障がい者との出会いをきっかけとして、互いの違いを認め合い、様々な人や考え方を受け入れられるような、柔軟な心を持って歩んで行ってほしいと願っています。 ※※ハートマークの上に、笑顔で手をつないで立っている子どもたちのイラスト。 2 のびのび保護者勉強会  視覚に障がいのある乳幼児~児童をもつ保護者の方対象に、年4回実施しています。  令和5年10月13日(金)に「子どもの豊かな育ちを支えるために」をテーマに、今年度3回目ののびのび保護者勉強会を開催しました。講師として、宮城教育大学名誉教授、全国視覚障害早期教育研究会名誉教授であり、主に乳幼児の視覚障害教育の第一線にて活動されている、猪平眞理氏をお招きしました。   参加者には来校いただき、参加者の話に、オンラインで講師の猪平氏にお答えいただく、座談会形式で実施しました。座談会は、終始温かい雰囲気で進み、猪平氏から、今がんばっていることを認め、励ましていただいて、少しずつ参加者の方々の表情が和らいでいく様子が見られました。そのうえで、専門的な視点からお話いただくことで、見えにくさのある子どもの教育で大切な観点をもつことができたことと思います。  この、のびのび保護者勉強会は、ここ数年、毎年猪平氏をお招きしており、大好評の勉強会となっています。今回の参加者からも、「話を聞いてもらえて勇気が湧いてきた。アドバイスいただいたことを早速やってみたい。」などの感想が聞かれました。また、教員も、この勉強会を通して、猪平氏のお人柄や参加者と向き合う姿に感銘を受け、お話から視覚障がい早期教育への理解を深めることができました。参加者にとって、大変有意義であり、大切な時間となりました。 最後に、今回キーワードとなった猪平氏の言葉を御紹介します。「幼児期は、生活そのものから学ぶことが力になる」「幼児期のあそびは子どもが主体」「教えられるより自分で気付いて学べる環境が大事」 ※※パンダの形をした遊具に乗って遊ぶ、男の子のイラスト。 ※※積み木を積み上げて遊ぶ、女の子のイラスト。 3 「どうしてますか?~単眼鏡の留め具~」 時々、保護者さんや本人から「単眼鏡の留め具が壊れてしまって。みなさん、どうしてますか?」と尋ねられることがあります。  留め具が壊れて紐が接続できないと、首から単眼鏡を下げられない ので困りますよね。そこで、本校の保護者さんが工夫してくださっている例をご紹介します。  写真では、「結束バンド」とよばれる、コード類を束ねるときなどに使うバンドを、単眼鏡の筒にグルッとひと巻き。そこに紐を接続しています。紐を首から下げても、不安定な感じはありません。  これから暖かい季節になります。単眼鏡を下げて、外への探索に出かけるのも楽しみですね。 ※※単眼鏡の写真。紐を通す穴が破損している。 ※※単眼鏡の筒に、結束バンドをひと巻した写真。バンドに紐を接続している。 ※※直立している、かわいいパンダのイラスト。 地域支援センター 目の相談室 のびのび 相談専用 TEL 080-7347-3908   mail shien-gr@fcs.ed.jp ※ 地域支援センターは県立視覚支援学校内に設置されています。 〒960-8002 福島市森合町6-34   TEL 024-534-2574  FAX 024-533-2470 URL https://fukushima-sb.fcs.ed.jp 以上。